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クマに襲われました 〜ユーコンの川下りを止む無く中止 Day10 後編〜

 カヌーで下っている時に クマの足跡を何度か見たことはありましたが、実際にその姿を見かけたことは1度もありませんでした。まさか こんな形で熊に出会うことになるとは全く思っていませんでした。

 1つ前の記事では、森の奥から足音が聞こえてきたというところで終わりました。今回は その続きから書いていきたいと思います。 

DAY10 晴れ 走行距離45km

 カーマックスで身も心もリフレッシュできて、またカヌーでの生活がスタート。今日もいい1日だったなぁと思いながら焚き火の近くで暖まって そろそろ寝る準備をしようと思っていると ”カサカサ” と森の奥から音が聞こえてきました。ドンドンとこっちにその音が近づいています。動物がこっちに近づいてきてる音だと思い、ひと足先にテントで休んでいる友人を起こして状況を伝えて その音の主を確認しにいきます。時間は22時を過ぎた頃で、太陽も沈んで どんどんと辺りは暗くなり始めていました。

 

 焚き火とテントから少し離れて、音がしている方を見に行くと 黒い大きな塊がこっちに向かってきているのが見えます。暗くてよく見えないので、もう1度目を凝らして その正体を確認すると 大きなクマがこっちに向かってきているのが見えました。びっくりした わたしは、とにかく人間がここにいるという事を知らせなければと思って 大きな音を出しました。すると、クマがその音に気づいて こっちを確認すると、さっきまで ゆっくり歩いていたのに 急に動くスピードをグッとあげて わたし達がテントを張っている方角に向かってきます。

 この日、わたし達がテントを立てた場所は キャンプできるスペースが高台になっている場所で、カヌーは高台の下の川沿いに留めてあります。クマを見つけた場所は、カヌーを留めてある場所とは反対の方向でした。わたし達は、どんどんと向かって来る クマから逃げるように、クマスプレーを握りしめて カヌーが留めてある方に降りて様子を見ることにしました。クマが もの凄い勢いで襲ってきた時に すぐにその場を離れられるようにと思い、カヌーに乗って待機します。クマに出会ってしまった以上 この場所でキャンプする選択肢はありませんが、とりあえずクマスプレーを持っただけで テントやパスポートなどの貴重品を含む自分たちの荷物のほんとんどを高台に置いてきてしまったので、このまま このキャンプ地を後にすることもできません。

 クマから逃げるように高台から降りて待機し始めてしばらくすると 高台から何かを漁っているような物音が聞こえてきていたのですが、5分ほどで物音が聞こえなくなりました。もしかして もう森の奥に帰っていったのかな?と、荷物だけでも取りに戻れたら何とかなる と思い、友人と相談してクマスプレーを片手に様子を見に行くことに。

 高台に続く道をそろりそろりと登っていきます、耳を澄ませても物音は聞こえてきません。もしかしたら もう高台にはいなくて 下の茂みの中に隠れているかもしれないと思い、辺りを確認しながら進みます。高台に辿り着いて ゆっくりと頭を上げて高台を覗き込むと、高台の真ん中にいた大きな塊が見えたと思ったら もの凄い速さでこっちに走ってきます。わたし達は 高台から転げ落ちるように下のカヌーの留めてあるところまで戻ります。クマスプレーを使う余裕も何もあったもんではありませんでした。

 

 クマは転げ落ちた わたし達を追いかけては来ませんでした。クマが高台から降りてきたら 絶対絶命だったので本当によかったです。

 ここからどうするべきか考えます。もう高台に荷物を取りに戻る選択肢はありません、今 持っているものはカヌーに積んだままにしていたバレルの中に入っている食材と食器類、わたしのポケットに入っていた携帯電話と 咄嗟に掴んだクマスプレー、友人が小銭を入れる小さい財布を持っているだけです。この日はカーマックスから出発して初日とはいえ、50キロ近くもカヌーを漕いでいたので 逆走してカーマックスまで戻ることは難しいと考えていると、遠くで車のライトと音が聞こえて カヌー用の地図の右側に Highway と記されていたことを思い出しました。携帯のオフライン地図で確認してみると、岸を上っていけばハイウェイに辿り着けそうです。ハイウェイに着いて どうするかは後で考えるとして、いつクマが襲って来るかわからないこの場所を出発です。

 ちょうど川の真ん中あたりの島の中にある Good HW Camp に滞在していたので、まずは ハイウェイのある右岸までカヌーを漕ぎます。右岸に着くと 岸にある木と石を使ってカヌー繋ぎ止めます。そこから地図でハイウェイと記されていた方角を見上げると結構 距離がありそうなうえに、なかなか険しそうな斜面が見えます。でも、他に選択肢もなく 気合いを入れて登ります。

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 斜面を登りきった先には 小さな森のような茂みが広がっています。クマがいても全然不思議でない雰囲気に、さっきの襲いかかるように走ってきたクマが 頭をよぎってゾッとしますが、もう進むしかありません。斜面を登り始めて、体感で30分くらいでハイウェイに到着しました。ハイウェイとはいっても 山の中に大きな道が一本通っているだけで、辺りには電灯も何もなく 道を挟むように森が広がっています。時刻は真夜中0時を過ぎた頃で、ハイウェイを走る車は1台も見当たらず シーンと静けさだけが漂っています。

 ハイウェイを走っている車を見つけたらヒッチハイクして、カーマックスの街までとりあえず戻れたらと思っていた わたし達は しばらくその辺りで車が来るのを待つことに。10分程待っていても車が一向に来る気配はなく、動かずに待っていると身体はどんどん冷えるうえに 怖さも増していきます。そこで、とりあえずハイウェイの上をカーマックスに向けて歩き始めることに。もしもクマが現れた時のために少しでも自分たちを大きく見せようと、自分の身長よりも高くて大きい木の枝を片手で持って歩きます。

 1時間ほど歩いていると、遠くから車の音が聞こえて 後ろを振り返ると車の光が見えます。そこから、一生懸命手を振って車を止めようとしましたが 車はわたし達を通り過ぎてしまいました。”あぁダメかぁ” と思っていると、わたし達を追い越して少し進んだところで 止まってくれたのが見えて 2人で駆け寄りました。事情を説明すると、カーマックスまで連れていってもらえることに。停まってくれた車には 2人の男性が乗っていて、ドーソンシティよりももっと北側で仕事があって ホワイトホースまで帰る途中だったそうです。停まってくれたことに、本当に感謝。

 カーマックスに到着すると、泊まる場所が必要だろうと「Hotel Carmacks」なら夜中でもチェックインできるからと その駐車場で降ろしてくれました。もうフロントは閉まっていましたが、バーでチェックイン可能とという紙が貼ってあるので、同じ館内にあるバーに行って チェックインしました。ホテルだと180ドルでしたが、キャビンだと95ドルだったので、キャビンにすることに。

 やっとキャビンに到着してベッドの上に腰を下ろします。とりあえず、置いて来た荷物やカヌーのことは明日考えようと、この日は休むことにします。長い長い1日がやっと終わります。

 

まとめ

 予想外のハプニングに困惑しながらも、もしかしたら死んでもおかしくない状況から無事に生還することができて本当に良かったです。

 カヌー中に野生のクマを見れるかもしれないなぁとか 出発前はのんきな事を思っていましたが、まさかクマに襲われることになるんて考えてもいなかったです。でも、クマがいるということを知っていたのだったら、そういう可能性も考えておかないといけなかったな と反省しました。