幸運なことにクマに襲われたのは カーマックスを出発して1日目 45kmほど川を下ったところだったので、なんとかカーマックスの街まで戻ってくることができました。
無事には戻ってこれたものの、カヌーや荷物のほとんどは置いてきてしまいました。それらを取り戻さなくてはいけないのですが、どこに助けを求めればいいのか分からず てんやわんや しました。
DAY11
朝7時に起きて、隣のスーパーでマフィンを買って 朝ご飯を食べながら これからの事を考えます。まずは自分たちが このままカヌーでの川下りをあの場所から続けたいか、もう川下りを中断したいかを決めなければいけません。始めたことは最後までやり遂げたいという思いもありますが、もしかしたらこの先もクマに襲われるかもしれないと思うとゾッとするというのが この時の正直な気持ちです。考えたあげく わたし達はカヌーでの川下りを中止するという決断を取りました。とはいえ、荷物もカヌーも熊に会った場所に置いてきてしま
もしも荷物とカヌーをカーマックスまで回収することが困難だった場合は、腹をくくって あの場所からドーソンシティまでカヌーを再開することに決めます。
とりあえず警察に行って相談してみることにしました。歩いて5分ほどの所に交番があるということで、行ってみることに。到着すると、交番は閉まっていて 用事がある人は電話するようにと 張り紙が貼ってありました。電話をして 要件を伝えると、10分以内には来てくれるとのこと。10分も待たないうちに、警察官が1人 来てくれて 中に入れてくれます。再び要件を伝えると、クマに遭遇した場所まで車で送迎して ライフルを持って付いてきてくれることはできるが、荷物やカヌーをカーマックスまで持って帰ってくる手伝いは出来ないとのこと。クマは1度気に入った場所に住みつく習性があるので、自分たちだけで戻るのは危険だと話してくれました。ついてきてくれるだけでも頼もしいですが、できればカヌーや荷物をカーマックスまで持って帰りたいので、他に方法がなかった時の最終手段とすることにして お礼とその旨を伝えて警察を後にします。
続いて、カヌーをレンタルした「Kanoe People」に電話をかけてみます。もともとはドーソンシティでの返却を予定していたのですが カーマックスで川下りを中止したいこと、カヌーなどのレンタルしたもの一式は クマに会った場所に置いてきてしまっていること を相談しました。カヌーの返却場所がカーマックスになることは問題ないそうですが、置いてきたレンタル品一式やわたし達の荷物を回収するために「Kanoe People」のあるホワイトホースから ボートで助けに来てくれることもできるそうですが、請求額は多額になるそう。
自分たちでカーマックスでボートを出して助けてくれる人を探した方が良心的な値段ですむのでは と提案してくれました。といっても、わたしは カーマックスに知り合いは1人もいないので どうしようと悩んでいると、カーマックスのカヌーの返却場所になっている「Coal mine campground」のオーナーがボートを持っていて 手助けをしてくれるかもしれないから 相談してみて連絡をくれることに。
今日中には解決しそうにないので、とりあえず昨日泊まったバンガローに 今日も泊まるように延泊の手続きをします。ただぼんやりと「Kanoe People」からの連絡を待っているわけにも行かないので 他に何かできることはないかと考えて、とりあえず 「Coal mine campground」に向かいます。その間にボートを持っている地元の人を見かけたら事情を説明して、交渉してみようということに。
そんな事を話しながら歩いていると、右手に 「Tage Cho Hudan Interpretive Centre」 という文化施設みたいなものが現れました。クマに出会って 遭難した時にどうすべきかは地元の人が1番よく知っているはずだと思い、ここでも相談してみることに。ここで働いている人がとても親切で "ユーコンの環境センターに連絡をして助けを求めましょう。この管轄を担当してる人を知っているから連絡してみる。" と電話をかけてくれました。
カーマックスの管轄を担当しているのが Deanさん という方だそうで、この時はカーマックスの森の奥に仕事があって今は時間が取れないけど、午後4時ぐらいには市街に戻れるのでその時に詳しく話を聞いてくれることになりました。施設のスタッフさんも Deanさんが来るまでは施設で待っていても大丈夫だと言ってくれて、まだお昼前だったのでしばらく施設で待たせてもらうことに。このスタッフさんが本当に親切な方で、待っている間 お話をしてくれたり、疲れただろうから仮眠ができるようにと自分の車を提供してくれたり と優しさに触れてほっこり。
午後4時を過ぎたころに Deanさんから施設に連絡があって、5分ぐらいで到着できますとのこと。到着すると、わたし達の話を熱心に聞いてくれて その日の夜か次の日の早朝に仲間と一緒に荷物とカヌーをカーマックスまで運んできてくれるというのです。そのうえ、これが自分たちの仕事だから お金も一切不要だと。さらに、わたし達がお金を十分に持っていないんじゃないかと心配してくれて もし今晩泊まる場所を見つけられなかったら、Deanさんのお家に泊まっても問題ないとまで言ってくれたのです。ありがたい お言葉ですがこれ以上迷惑をかけては申し訳ないと思い、幸いにも友人が財布を持っている事を伝えて 丁重にお断りしました。本当に有り難かったです。荷物とカヌーを置いてきた場所を地図上で伝え、荷物を回収でき次第 わたしの携帯まで連絡してくれることになり Deanさんとは一旦お別れしました。
スタッフさんに報告をしていると、少し前にお客さんとして施設を訪れていて ちょこっとだけ話をした人が大量のお菓子やフルーツを わたし達に届けに来てくれたのです。わたし達のことを考えてくれた気持ちが本当に嬉しかったです。
とりあえず、ホテルに戻って休もうと 帰る前にスタッフさんにお礼を伝えると、ホテルまで送ってくれるというのです。もうたくさんお世話になったので 断ろうとしましたが、どうせ自分もそっちに向かうので乗っていきなさい と結局乗せてもらうことに。改めて車の中で、お礼を伝えると、当たり前のことだよ と返事が返ってきました。
「Kanoe People」にも連絡して 現在の状況を伝え、カヌーが戻ってきた後はカーマックスの「Coal mine campground」のに返却できるよう変更をお願いしました。そして、夜21時ごろにDeanさんから無事に荷物の回収が終わったと連絡がありました。明日の朝9時に 「Coal mine campground」で待ち合わせて、荷物とカヌーを引き渡してくれることになりました。もう本当にたくさんの人に助けてもらって本当に本当にありがたい。
ちなみに、わたし達を助けてくれたDeanさんの働いている施設が「Yukon department of enviroment , Conservation officer services」というところで、電話番号が (867)863-2411です。もし何かトラブルが発生した場合は相談に乗ってくれることと思います。HPには、英語ですが クマに会った時の正しい対処方法などを詳しく書いてくれています。
まとめ
クマに襲われた直後は この日を忘れることはないと思いましたが、その後に本当にたくさんの人の優しさに触れて、この事こそ忘れることはないと思いました。全てが終わった後、多分ずっと我慢していたのか 自分でもビックリするほど自然に涙が溢れてきて思いっきり泣きました。
